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Wolfhound Monthly

アイリッシュウルフハウンド雑記帳

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「いちばん確実な方法」

長年の経験をもつ名ブリーダーであり、アイリッシュ・ウルフハウンドについての造詣が深く、多くの著作もあるロイス・トマソンさんによるエッセイ「いちばん確実な方法」。いまのウルフハウンド・ブリーダーたち、愛好家たちの多くがどこかで忘れてしまった大切なことを書いてくれています。ぜひ読んでいただきたくて、翻訳しました。


いちばん確実な方法 ― ロイス・J・ホール・トマソン
"The Surest Way" by Lois J. Hall-Thomasson


何年も前、『サイトハウンドの真実を探して』の著者コニー・ミラーと議論をしていたとき、彼女はこう言った。犬種をタイプに忠実に維持するいちばん確実な方法は、過去の偉大な犬たちを愛好家たちに示し続けることだ、と。

サラムステッド犬舎のJ・ネイグル氏と同じように、グレアム大尉の犬が正しいアイリッシュ・ウルフハウンドだと考えるなら、グレアムの時代の傑出した犬たちに特別な注意を払うべきであろう。そうした名犬たちには、ブラン2世とブライアン2世という、ほとんど全てのウルフハウンドの祖先となった2頭の雄犬も含まれる。50年前、私を導いてくれた先輩のブリーダーたちにとって、この2頭とその子孫は繁殖のプロトタイプ(原型)となるものだった。しかし、今日のブリーダーの多くは、これらの犬を知らないか、興味をもっていない。

グレアムはよく研究をしていたため、彼が使った優れた血統は、驚くほど短い期間で昔のアイリッシュ・ウルフドッグ[アイリッシュ・ウルフハウンドの古い呼び名]の姿を獲得することができた。私の机の上には、ブライアン2世の写真が置いてある。その姿は、祖先にグレート・デーンが入っているにもかかわらず、21世紀のウルフハウンドによく似ている。いま私の庭で走り回っている、ウィートンのウルフハウンドたちにもよく似ている。

1893年生まれのブライアンは、体高84センチ、良い四肢を持つと言われ、美しい頭部、毛色はウィートンでマズルに黒いマスクがかかっていた。息子のウォーグレイブ、孫のオーリム、そしてひ孫のフェリクストウ・キルカレンと、偉大な父方系統を築いた。有名な種雄サラムステッド・コンカラもこの系統の直系である。ここに挙げた犬たちは皆、ブライアンの明るい毛色をもつ、堂々たるタイプのウルフハウンドであった。グレイハウンドに似て、長い脚、よく締まったウエスト、腰のアーチ、そしてゆったりとした立ち姿。

1893年生まれのブラン2世は、フィリス・ガードナーが「美しい頭部と高貴な身のこなしを備えた偉大な先祖犬」と呼んだ有名なオリアリーの父犬である。1902年に亡くなったあと剥製にされ、ロンドンの自然史博物館に陳列された。

オリアリーの息子が、グレアムたちが最高傑作と言ったチャンピオン犬のコッツウォルズで、その系統から何頭かのとても良い犬が出ている。コッツウォルズは非常に優れたタイプの堂々とした犬で、現代のドッグショーに出ても立派に見えるだろう。

ウルフハウンドの犬種スタンダードの要点を、歴史を通して繰り返し言われてきた言葉で明示すれば、大きなサイズであること、グレイハウンドに似ていること、そして力強さ、ということになる。1888年の委員会に参加して、1885年に書かれたスタンダードの草稿を検討したアイルランド人ジョン・F・ベイリーは、こう書いてる。「新人に何か助言を与えるとするなら、私はクラブのスタンダードを研究しなさいと言う。それはこれ以上改善の余地のないものだ。そしてまた、レネーグルの絵を研究しなさいと。この犬の毛と骨量をほんの少し増やした絵を頭に描けば、それが導きの星となる。ギャロップ犬種であるグレイハウンドの形に大いなるパワーを兼ね備えた犬を作ることは、いまのところ困難ではあるが、克服できないものではない」。

私たちは今日、胸の発達しすぎた前躯、土管のような胴体、短い脚と角度過多の後肢をもつジェネリック・ショードッグを、あまりにも頻繁に目にする。グレアムとベイリーがそんな犬を見たとしても、ウルフハウンドだとはわからないだろう。そうした犬もアイリッシュ・ウルフハウンドとして登録され、ときにはショーで賞を勝ち取ることもある。するとオーナーは、自分の犬が正しいに違いないと思ってしまうのだが、その犬はグレアム大尉の犬とは別物である。グレアムの犬の特質とは、グレイハウンドのような外見、力強く筋肉質、腰のアーチと引き締まったウエストを持ち、非常に速く力強い動きで長い距離を走ることができる、生まれながらのアスリートに他ならない。背が高く、頭を高く掲げ、高貴で威厳に満ちた存在。フィンガルが作ったのは、そのような犬だった。

アイリッシュ・ウルフハウンド・クラブの教育担当を長く務めたある友人は、ウルフハウンドは進化しなければいけないと感じていた。長年の間に、たしかに外見上は、多くの犬がより格好よくなったと言えるだろう。しかし、過去80年にわたってアメリカのアイリッシュ・ウルフハウンド・クラブとその会員は、スタンダードを変更したり近代化しようとする一切の企てに反対してきた。クラブの目標は、栄光に満ちた古の猟犬を完璧に作出することにある。その目標は変わっていない、それこそがグレアムの犬である。

前に進むためには、歴史を知らなくてはならない。レネーグルの絵で、猟犬の頭部は肩越しに後ろを振り返っている。「アイルランドはいつも肩越しに振り返って、過去を見ている」というフレーズのごとく。犬種タイプに忠実な犬を作り出すいちばん確実な方法は、これらの偉大な初期の犬たちに学ぶことである。


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レネーグル「アイリッシュ・ウルフドッグ」(1803年)の複製画




※この記事は「AKCガゼット」(2005年)に掲載されたものを、著者ロイス・トマソン氏のご了解を得て翻訳・掲載しています。無断転載・利用はお断りします。

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