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Wolfhound Monthly

アイリッシュウルフハウンド雑記帳

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ルアーコーシングとは


グレイハウンドなどのサイトハウンドがする狩り(ウサギ狩りなど)をコーシングと言います。生きた動物を獲物とする代わりに、ルアー=犬を誘うオトリを追って走るのがルアーコーシングです。嗅覚ではなく視覚によって獲物を追い狩りをするサイトハウンドのドッグスポーツです。


コースの特徴と仕組み

猟犬に追われて逃げるうさぎは、犬をかわそうと急ターンを繰り返しながら高速で走ります。競技としてのルアーコーシングはうさぎ狩りを模しているので、コースは通常、500〜800メートル程度の長さで、途中に何ヶ所かコーナーを設けてジグザグにします。(簡易バージョンとして、短い直線コースで行うこともあります)。

ルアーコーシングの会場には、牧草地など、広くて走りやすく、かつ安全な場所が使用されます。地面に起伏があったり、また芝生や短い草地のほか、土、砂、雪上でも行うなど、競技会ごとにコースも環境も変化に富んでいるのもルアーコーシングの面白いところかも。

ルアーは、本物の動物の毛皮や、ビニール袋(いわゆるレジ袋)、プラスティックテープの束などを用います。そのルアーに丈夫な紐をつけて、モーター(コーシングマシン)で巻き取ります。コーナーにはプーリーという部品を地面に刺して設置します。紐をすべてのプーリーに引っ掛けることで、ルアーがコース通りジグザグに動きながら巻き取られて行きます。

ジグザグのコースは、例えばこんな感じ。
lurecoursingコース例


競技会

北米やヨーロッパでは、地元クラブ主催の大会から全国大会、さらにヨーロッパ・コーシング・チャンピオンシップなど、さまざまなレベルの競技会があります。FCIの大会では、ゼッケンを着けて一度に2頭ずつ走ります。ケガ防止のため、マズルガードの装着も義務づけられています。また、公式競技会に出るためには、まず基本的な適性試験を受けて資格を取得する必要があります。

ちなみに、公式大会ではサイトハウンド犬種限定になりますが、サイトハウンド以外の犬種でもコーシングが大好きな犬は沢山います(IWオフ会では、アイリッシュセッターとかシベリアンハスキーとかが印象に残っています)。ドッグスポーツのひとつとして、いろんな犬に楽しんでもらえればいいなと思います。

こちらは2014年にフィンランドで開催されたEIWCの初日にあったルアーコーシング大会で撮影した動画です。ウルフハウンドだけでも数十頭はエントリーした大会でした。6月というのに猛烈寒く、しかも雨風が強いなか傘をさしながら撮影したので、見づらくてすみません。しかも途中コースの起伏のため、見学位置からは犬がまったく見えなくなる場所があります。この動画では、2頭でスタートし1頭がじきにコースアウト、もう1頭は完走しました。




採点

ルアーコーシングは、審査員による採点で順位が決まる競技です。トラックレースや直線レースと異なり、早くゴールすればよいわけではありません。

FCIのルールでは、複数の審査員が犬の走りをスピード、意欲、アジリティ(俊敏さ)、知能、持久力の5項目(各20点満点)によって採点します。アメリカの団体ASFAでは、スピード(25点)、アジリティ(25点)、持久力(20点)、意欲(15点)、ルアーを忠実に追っているか(15点)の合計100点満点です。

国や団体によって採点ルールは少しずつ異なりますが、見ている点はだいたい同じです。たとえば、ジグザグコースの途中をショートカットして早くゴールに向かおうとするような行為は減点になります。途中でルアーを見失うような場合も同様です。ルアーを最後までしっかりと忠実に追いながら、かつスピードも持久力もあることがポイントです。


ルアーコーシングの魅力

大型のサイトハウンドであるウルフハウンドにとって、ウサギは犬種本来の獲物ではありません。ウルフハウンドが元々主な獲物としていたオオカミや鹿、猪など大型の獲物の動きは、ウサギの動きとはかなり異なります。しかし、実猟においてウルフハウンドという犬種の身体能力や狩猟本能を試したり、磨いたりすることは、現代社会ではほぼ望めません。自然環境が失われ、あるいは動物愛護の観点からも問題視されることも多くなっているからです。そうしたなかで、サイトハウンドとしてのスピード、スタミナ、獲物を追う狩猟本能をみるのに、ルアーコーシングは良い機会を提供してくれます。

そんなことはさておいても、サイトハウンドにとっては、周りを一切気にせず集中して何かを追いかけて全力で走ることができる喜びは、他では得難い最高に楽しい経験です。他の犬と遊びながら走るドッグランなどとはまた違う経験ができる場。まさに犬種本来の能力を遺憾なく発揮できる場がルアーコーシングなのです。

ルアーコーシングは、サイトハウンド自身にとってもとても楽しいイベントですが、飼い主にとってもやはり楽しみは大きいと感じます。全力ギャロップで軽やかに身を翻しながら真剣に走るサイトハウンドの姿は、とても美しいものです。犬が心身ともに充実した時間を過ごしているのを見るだけで、飼い主にも同じような充実感があるから不思議です。ドイツ語ではサイトハウンドのことをヴィントフント(風犬)と言います。風になって走る犬、風と自然と人とが一体になれる。ルアーコーシングの魅力はそんなところにあるのかなと思います。

timorun20091017.jpeg


IWオフ会のルアーコーシング

IWオフ会では2003年の第1回から、場所や形式は多少変わってもずっとルアーコーシングを続けてきました。オフ会はコーシングのための集まりではないので、狩猟本能の強い犬もいれば、そうでない犬もいます。ルアーに興味がまったくなかったり、周囲に気が散って集中できない犬もいます。どんな犬でも楽しめるように、100mの直線コースでタイムを計って順位を決めるという、本来のルアーコーシングとは少し違う、簡易バージョンでやってきました。しかも、飼い主さんはゴール地点に先回りして犬の名前を呼んでも、あるいはスタート地点から一緒に走ってもよい、何でもありのスタイルです。これはこれで、運動会のノリで楽しいかなと思います。

20頭くらいのウルフハウンドを走らせると、だいたい5〜6頭くらいでしょうか、コーシングキチガイになってくれる犬がいます。スタート地点でスタート合図まで抑えておくのが大変、というような犬です(ティモもそうでした)。こういう犬は、100メートルの直線コースではまったく物足りない。100メートルでは、体の重いウルフハウンドの場合、ようやくスピードが乗ってきたところで終了になってしまうのです。

やっぱり本来の長いジグザグコースを走らせてみたい。そこで2014年のオフ会で初めて、200メートルのジグザグコースを設定してみました。いままで直線だったのが急にジグザグになって戸惑う犬もいれば、見事にルアーに集中して最後まで追った犬、ゴールはあっちでしょとショートカットした頭の良い犬と、結果はいろいろでしたが、本格的なルアーコーシングの醍醐味を少しでも感じられた経験となりました。コースの距離をもっと長くすると、個々の犬のスタミナや意欲といった点もよりはっきりわかるのかなと思います。

2014iwm_timo.jpg


本格的ルアーコーシングに向けて

800メートル近い長いコースで本格的に走るには、本来持っている資質に加えて、日頃の運動での体作り、コンディショニングも重要になってきます。ウルフハウンドは大きく重たいので、距離が長いと終盤で体力が続かなくなる傾向があります。理想的なコンディション維持には、超大型サイトハウンドゆえの難しさもありますが、やはりサイトハウンドを飼った以上、飼い主として最善を尽くしてあげたいところです。海外の熱心な愛好家は、仔犬の頃から遊びのなかでルアーを追いかけさせたりして、才能のある犬を見つけ、能力を引き出していくこともします。

本格的なルアーコーシング競技をしようと思うと、日本ではまだ環境が整わず、さまざまな問題に行き当たります。ジグザグとはいえ800mのコースを作るには、かなり広い場所が必要です。IWオフ会では個人的なツテを頼って牧草地をお借りしていますが、もっと広い場所となると、商業施設などを探すことになり、小規模な会では費用面が厳しい課題になります。

もっと重要なこととして、日本では公式な競技として定着していないために、現状ではルアーコーシングの審査員がいません。直線コースでタイムを計る形式なら簡単ですが、ひとつの大会で何十頭もの犬を公平に採点していくには、それなりの訓練や経験が必要。ルアーマシンの操作や、安全で走りやすいコース設定などの点でも同様に、経験を重ねていく必要があります。

コースが長くなるほど、完走できる犬も減ってきます。いろいろな条件を考えると、現段階では200〜300メートルのコースが現実的かなと思っています。欠けているものは沢山あるかもしれないけれど、まずは何より「犬が楽しむ」ことが一番の目的ですから。そして、だんだんとルアーコーシング・ファンが増えれば、いずれは本格的な競技会への道も拓けてくるんじゃないかと期待しています。

最後に、アメリカのルアーコーシングについて説明した動画をご紹介します。参加者の方々のインタビューも沢山交えていますが、何人かの人が、勝つためとかではなく何よりも犬の喜びのためにやっている、と語っているのが、深く深く頷けます。英語ですが、いろんなサイトハウンド犬種が走る姿も見れますので、どうぞご覧ください。




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