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Wolfhound Monthly

アイリッシュウルフハウンド雑記帳

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8、9歳を過ぎて老衰せず

犬界(S12年4巻2号)表紙



先日、知人から貴重な資料をいただきました。昭和12年発行の雑誌『犬界』。そのなかに伊藤治郎という人が書いた「アイリシユ・ウルフハウンドの事ども」という記事が掲載されていました。筆者の伊藤治郎という人は、犬の飼い方などの本を何冊も書いている人。ご本人がIWを飼っていたわけではなさそうで、この記事はいくつか英語文献をもとに書いたと推察されます。その最後の部分にこんなことが書いてありました。


「此の種は他の大型の犬の如くに、八、九歳を過ぎても老衰したり、短気で噛みつきやすくならず、扱ひやすいので、子供の遊び相手としても良い犬である」


年を取ると短気で噛みつきやすくなる犬ってなんだ?というのはさておき、「8、9歳を過ぎても老衰しない」というところに目を引かれました。引用箇所も海外文献からの引き写しでしょうか(時間ができたら出典を探してみようと思います)。

犬種の寿命について、古い統計データやまとまった記録はほとんどありません。1960年代頃以降は、いくつかデータがあり、犬種の平均寿命はだいたい6.5歳です。8、9歳を過ぎても老衰しない、は実感としても違和感があります。もちろん、10歳を超えて長生きする子は、8、9歳でまだ若々しいでしょうけれど、そういう犬は多分全体の1割いるかどうか。

昔と比べて犬種が不健全になっているかどうか、というテーマは時折話題になります。昔より病気が増えている、いやそれは獣医学の進歩や検査方法の発達で昔はわからなかった病気がわかるようになっただけだ、云々。医療の進歩の結果、昔は助からなかった個体が助かり、しかし病気を抱えて生きるというケースは増えていると思います。そもそも、予防接種もなく、犬のケアも今ほど行き届かなかった時代、弱い個体は子犬のうちに亡くなったり、ジステンパーなどで死ぬケースも多かった。生き残った個体群の平均的な健全性が今より高かったとしても不思議はない気がします。

もうひとつは例のボトルネックの問題。個体数が極端に減り、繁殖に適した個体が限られ、結果として遺伝子のプールが極端に小さくなってしまう状態が、ボトルネック。IWは19世紀以降、少なくとも3回のボトルネックを経験していると言われます。絶滅から復活した時(19世紀末)、両大戦期(とくに第2次大戦)、そして戦後(これは"popular sire"現象によるもの)。これが健全性や寿命にも影響を及ぼしている可能性は否めません。

単純に昔の方がよかったとも言えないわけですが、「8、9歳を過ぎても老衰しない」と言えるような犬種にふたたびなってほしいものです。

犬界4-2 p15



それにしても、昔の犬雑誌の記事はまじめで探究心に溢れていますね。犬種の起源から説き起こし、歴史、血統や用途、飼い方など。この時代に日本でアイリッシュ・ウルフハウンドを見たり飼ったりしたことのある人はほとんどいなかったと思われますが、きちんと文献を調べて(英語文献中心のようですが)まとめています。他犬種の記事も同様。タイトルからして「〜の考察」とか「〜の史的研究」とか硬派です(笑)一方、写真や挿絵などはほぼ皆無。気軽に画像を入れられる現代とは違ったのでしょうが、それだけではない気がします。そんなまじめでマニアックな雑誌ですが、1ページだけ写真メインのページがありました。そこにつけられたキャプションがまたふるっています。

「日本の畜犬界も大分発達して来ましたが娘さんや老婦人が此の様に犬を扱へる様になるのが待遠しく思ひます」

犬界4-2 p3




さて、そんな日が来たのでしょうか。いろんな点で、まだまだのような気がします…。


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